営魄(えいはく)を載(やす)んじ
迷える肉体をおちつけて唯一(ゆいいつ)の「道」をしっかりと守り、それから離れないでいることができようか。精気を集中し身心を柔軟にして、嬰児(あかご)のようになることができようか。不可思議な心の鏡を洗い清めて、少しのおちどもないようにできようか。人民を愛し国を治めて、それで人に知られないでいることができようか。万物の出てくる天門が開いたり閉じたりして活動するとき、雌(めす)のように静かな受け身でいることができようか。すみからすみまではっきりとわかっていて、それで何事もしないでいることができようか。
ものを生み出して、ものを養い、ものを生み出しても、それを自分のものとはせず、大きな仕事をしても、それに頼ることはせず、首長(かしら)となっても、居すわってとりしきったりはしない。
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以上が玄徳(げんとく)——不可思議な能力——といわれる聖人の徳である。
営(まど)(熒)える魄(うつしみ)を載(やす)(安)んじ、一(いつ)を抱きて、能(よ)く離るること無からんか。気を専(もつば)らにし柔を致(いた)して、能く嬰児(えいじ)ならんか。玄覧(げんらん)(鑑)を滌除(てきじょう)して、能く疵(し)無からんか。民(たみ)を愛し国を治めて、能く以て為(な)すこと無からんか。天門開闔(かいこう)して、能く雌(し)たらんか。明白四達(めいはくしたつ)して、能く以て為(な)すこと無からんか。
これを生(しよう)じこれを畜(やしな)い、生ずるも而(しか)も有(ゆう)とせず、為(な)すも而も恃(たの)まず、長たるも而も宰(さい)たらず。是(こ)れを玄徳(げんとく)と謂(い)う。
載営魄抱一、能無離乎。専気致柔、能嬰児乎。滌除玄覧、能無疵乎。愛民治国、能無以知乎。天門開闔、能為雌乎。明白四達、能無以為乎。
生之畜之、生而不有、為而不恃、長而不宰。是謂玄徳。
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