道を以(もつ)て人主
道を以(もつ)て人主(じんしゅ)を佐(たす)くる者(戦争とは(1))
真実の「道」にもとづいて君主の政治を補佐しようとする人は、武力によって世界をおびやかしたりはしない。そんなことをすると、しばしば悪い報(むく)いがはねかえってくるものだ。つまり、軍隊の駐屯(とどま)った所は、耕地も荒れていばらやとげのある木が生えることになり、大きな戦争のあとでは、必ず凶作の年がつづくのだ。
「道」に従うすぐれた人は、勝利をおさめたらそれでやめる。さらに進んで無理に相手をおびやかそうとしたりはしない。勝利をおさめても、それを誇って尊大にかまえたりすることがなく、勝利をおさめても、それを鼻にかけて自慢したりすることがなく、勝利をおさめても、それを傲慢(ごうまん)になることがある、勝利をおさめても、それをやむをえないことであったとする。それこそ、勝利をおさめても、さらに無理なおどしをかけたりしないということなのだ。
ものごとは強壮であればあるほど、無理なことをして老衰(ろうすい)へと落ちこむ。これこそ、「道」に従わないということだ。「道」に従わないのでは、すぐに滅びてしまう。
道(みち)を以(もつ)て人主(じんしゅ)を佐(たす)くる者は、兵(へい)を以て天下に強いず。其の事は還(かえ)るを好む。師(し)の処(お)る所は、荊棘(けいきょく)焉(ここ)に生じ、大軍の後は、必ず凶年あり。
善者は果(勝)つのみ。以て強(し)いるを取らず。果ちて矜(ほこ)ること勿(な)く、果ちて伐(ほこ)ること勿く、果ちて驕(おご)ること勿く、果ちて己(や)むを得ずとす。是(こ)れを果ちて強いる勿しと謂(い)う。
物は壮(きかん)なれば則(すなわ)ち老(お)ゆ。是(こ)れを不道(ふどう)と謂(い)う。不道は早く己(や)む。
以道佐人主者、不以兵強天下。其事好還。師之所処、荆棘生焉、大軍之後、必有凶年。
善者果而已。不以取強。果而勿矜、果而勿伐、果而勿驕、果而不得已。是謂果而勿強。
物壮則老。是謂不道。不道早已。
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