虚(きょ)を致(いた)すこと
虚(きょ)を致(いた)すこと極まり(「一道」の体験(3))
あくまでも無欲になってどこまでも心を空虚(から)にし、深い静けさをしっかりと固く守っている。そうしていると、万物はどれもこれもすべて盛んに生長しているが、自分にはそれらがまたもとに返っていくのがみえる。
いったい物は盛んに繁茂(はんも)しているが、それぞれにその生まれ出た根もとに帰っていくものだ。根もとに帰っていくことは深い静寂に入ることだといわれ、それはまた本来の運命にたちもどることだといわれる。運命にたちもどることは、一定して変わることのない常道(じょうどう)といわれ、この一定不変の常道をわきまえていると明智とよばれるが、常道を知らないでいると、でたらめなことをして悪い結果におちいる。
一定不変の常道をわきまえていれば、どんなことでも包容できる。すべてを包容できれば、それが偏(かたよ)りのない公平であり、公平無私であれば、それが王者の徳であり、王者と一致すれば、それは天のはたらきであり、天と一致すれば、それは「道」とも一致し、「道」と一致すれば、それは永久である。このような人は、その生涯を通じて危険にあうことがない。
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