虚(きょ)を致
虚(きょ)を致(いた)すこと極(きわ)まり、静(せい)を守ること篤(あつ)し。万物(ばんぶつ)は並(なら)び作(お)こるも、吾(わ)れは以て復(かえ)るを観(み)る。
夫(そ)れ物(もの)の芸芸(うんうん)たる、各々(おのおの)其の根(こん)に復帰(ふつき)す。根に帰るを静と曰(い)い、是(こ)れを命(めい)に復ると謂(い)う。命に復るを常(じょう)と曰い、常を知るを明(めい)と曰い、常を知らざれば、妄作9もうさ)して凶(きょう)なり。
常を知れば容なり。容は乃(すなわ)ち公(こう)なり、公は乃ち王(おう)なり、王は乃ち天(てん)なり、天は乃ち道(みち)なり、道は乃ち久し。身(み)を没(お)うるまで殆(あや)うからず。
致虚極、守静篤。万物並作、吾以観復。
夫物芸芸、各復帰其根。帰根曰静、是調復命。復命曰常、知常曰明、不知常、妄作凶。
知常容。容乃公、公乃王、王乃天、天乃道、道乃久。没身不殆。
哲人は世界の真相を洞察する。世界の万象(ばんしょう)は生き生きと活動し、どこまでも伸長してやまないようにみえる。しかし、ただ生成をつづけて前へ前へと進むだけにみえるその現象は、実はそのまま死滅への回帰の動きであることを、哲人は見ぬくのである。そして、おのれ自らその回帰の根源にしっかりと腰を落ちつけて、生涯にわたって危険のない立場を守りとお
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