はだかの王様
少年が、王様を見て言いました。
「あれ?王様ははだかだよ。」
それを聞いて周りの大人が一斉に言いました。
「ぼうや、王様ははだかなんかじゃないんだよ。世界一美しい洋服を着て
いらっしゃる。」
少年は、変だなあと思いましたが、周りの大人がみんなでそう言うので、
ほんとうのことを言うのを止めました。
王様の演説が始まりました。
「私は、経済を立て直し、国民の生活は豊かになりつつある。」
少年が言いました。
「うちのお父さんはリストラされたままだよ。介護保険料や年金の掛金も
上がる一方で、将来が不安でたまらないって言ってたよ。」
周りの大人が慌てて言いました。
「ぼうや、王様がああおっしゃってるんだから、だいじょうぶだよ。きっ
とよくなる。」
少年は、周りの大人に強く言われて、黙ってしまいました。
王様は演説を続けました。
「三位一体で、構造改革で、民営化だ。」
大人たちは拍手喝采でした。でも、少年は言いました。
「ぼくの町の人たちは元気ないよ。税金が増えるんだって。消費税も上が
るそうだし???。合併なんて意味ないし。トクシュがドクリツギョウセイに
なっただけで、いらないのがどんどん増えてるし。いいことなんて、ど
こを探したってありゃしない。」
周りの大人たちは、ちょっと考えて言いました。
「ぼうや、悪いのは王様じゃなくて、カンリョウ様なんだよ。セクハラシ
ャチョウ様なんてのもいる。だから、王様をせめちゃいけない。王様だって、
ハダカで頑張っておられるんだから。」
大人たちは、深いため息をついて、長い長い棘(イバラ)の道を、また、
歩き始めましたとさ。
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