日语阅读:お金を持たずに出国
関西国際空港で、北京行きの搭乗待合室の椅子に腰をかけてホットしていると、ふと何かやり残した気がした。前日までの忙しさに追われて、何の準備もせずに飛び出して、今ここにいる。
「そうだ、銀行でお金を引き出すのを忘れた!」
今までのゆったりした気分がいっぺんに吹き飛んでしまった。「どうしよう!」
すぐに持っている現金を確認する。1万4千円と小銭が少々。これでは、いくらなんでも5日間の旅には足りない。ここから外に出て、とにもかくにも銀行に行きたいが、搭乗まで30分位しかない。果たして外に出られるだろうか。日航の女性職員をつかまえて、事情を話すが「出国手続を済ませているので、もう戻れません」と冷たく突き放されてしまった。ああ、なんと官僚的で、思いやりのない返事だろう。
「例外のない規則などないはずなのに」と思ってみるがどうにもならない。
そこで気をとりなおして「中国で、なんとか現金化できないだろうか?」と考えた。私の財布の中には2種類のカードが入っている。1つはキャッシュカードである。いくらなんでも、これは使えない。もう1つはクレジットカードである。以前にこのカードを使って、中国で支払いをしたこともあるし、ホテルでの保証金の代わりに使用したこともある。あわてて旅行案内書を調べてみるが「ビザカードかマスターカードの、いずれか1枚は持っていたほうがよい」と書いてあるだけで、現金化については何も触れていない。あらためて私のカードを見ると、『MasterCard』と書いてある。その裏側に問合せ先が載っているので、早速、携帯電話をかけてみるが、今日は12月30日、年末のためか通話中で連絡がつかない。そのうち搭乗が始まる。あっという間に30分がすぎ、何もできないまま時間切れとなり、飛行機に乗る。お金を持たずに、言葉も、事情もよくわからない国へ、1人で出発である。
これまでの私の旅はリュックサック1つ持って、はじめから細かいスケジュールを立てずに現地の状況を見て決めるというスタイルをとって来た。しかも、大都会ではなく地方で、できるだけ現地に自然の形で溶け込みたいという希望を持っている。それだけに今までの旅先は現金だけしか通用しない場所が多かった。しかし、今回はそれをあきらめざるを得ない。なにしろ今現金が手元にないのだ。カードで支払えるところだけの限定された旅になってもしょうがないと腹を決め、あとは成り行きに任せようと思った。
今日の予定は北京経由で鄭州まで行くことになっている。本当は洛陽に直行したかったのだが、飛行機の便が少なく、うまく日程が合わなかった。鄭州は河南省の省都で洛陽に近い。到着が夜になるので、そこで一泊し、翌日バスで行く予定だ。
北京空港では国際線で入国手続を済ませてから、国内線のターミナルに移動し、鄭州行きの搭乗手続をすることになる。初めての空港なので、勝手がわからずウロウロせざるを得ない。まあ、いつものことで経験済みだが、中国人の中に私だけが入り込んでしまう形になるので、慣れていてもやはり心細さが増す。そのうえ、気付くと私が乗る飛行機が掲示されていない。何度探しても見つからない。
「どうなっているのか」
とあわてて、案内所で確認すると、その便はキャンセルとなっていて、次の便が2時間遅れの20時40分発とのこと。ホテルに着くのが夜の11時近くになりそうである。やれやれと思いながら、早めの夕食をとることにした。
予定より遅れながらもようやく鄭州空港に到着。しかし。、ここからホテルまでが一番緊張し、用心するところである。なぜなら、悪い輩が空港に一番集まっているからである。本来ならば、初めての場所で、しかも夜のことだからタクシーに乗ってホテルまで行くのが一番安心である。
ただし、その場合でも、タクシーがメーターで走っているかどうか確認する必要がある。まして、擦り寄ってくる輩の車には乗らないことだ。どこに連れて行かれるかわからないし、着いたとしても、通常の2倍から3倍のお金を支払わされることになる。私はハノイと広州で2度もひっかかった苦い経験を持っている。幸い、お金を支払うことだけで済んだが、旅の気分が害されたことにはかわりがない。
しかし、そうはいっても、今は現金が少ないので贅沢は出来ない。タクシーより安いバスで行くことにしたいが、こんなに遅い時間まで、はたして該当するバスがあるだろうか?不安だが、ここでウロウロ、キョロキョロできない。不安につけこまれないように、すべてがわかって行動しているという態度を演ずる必要がある。そうしないと、てぐすねひいて鴨を待っている輩が必ず声をかけて来る。わき目も振らずに歩いて行くと、目の前にそれらしきバスを確認する。「ホッ」とする。運転手に、行先の確認と手帳に書いたホテル名を見せると、うなずいて、「乗れ」というジェスチャーをした。料金は15元(210円)である。ここから市内まで1時間はかかる。それにしても、外に出てみるととても寒い。身体の芯まで冷えるとはこのことである。
終点のバス停からタクシーを捕まえて、ようやくホテルに着いた。とてもりっぱなホテルである。中州皇冠假日賓館と書き、「鄭州のホリディ??イン??ホテル」と呼ぶ。初日のホテルだけは日本で予約がとってあり、支払いを済ませてある。このホテルは鄭州でもトップクラスである。チェックインを済ませると、夜も遅いので、何も考えずに寝ることにした。
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