日本人的子女教育观3
が自慢(?)の黒髪をばっさりと切った。もうすぐ5歳になるのだが、これまでほとんど髪の毛を切ったことがなかったので、腰に届きそうなくらい長かった。それを思い切って切ったのは「Locks of Love」(ロックス?オブ?ラブ)といって、かつらが必要な病気の子どもたちや大人に提供するためのプログラムに参加するためだ。
近所に住む仲のいいお姉ちゃんが、髪を寄付したのを見て、娘も「切りたい」といいだした。私もいつかは娘の髪を役立たせたいと思っていたので、ちょうどいいタイミングだった。
この「Locks of Love」(ロックス?オブ?ラブ)という名前、"Lock"とは、「鍵をする」などのロックと同じつづりではあるが、「髪の束」という意味がある。条件に合わせて自分で髪をカットして、団体に送ることもできるし、美容院でもやってくれる。美容院で髪の毛をカットする場合、洗髪とカット代は無料になるところがほとんどだ。お金はチップを払うだけでいい(チップもいらないとはいわれるが)。
娘にとって初めての美容院。シャンプー台で髪を洗ってもらったり、手を引かれながら店内を移動したり、大きな鏡の前でヘアーカットしてもらい、プリンセス気分を味わった。
三つ編みにして10インチ(約25センチ)が必要なため、想像していたよりも長さが必要だった。切った後はかなり短めの「おかっぱ頭」になってしまった。娘ははじめ、鏡に映った自分を「ちょっとプリンセスじゃないみたい」とすねていたが、店員たちからも「こんなにかわいい女の子、見たことないわ」とか「素敵ねぇ」「かわいいわ」と賞賛され、「気に入ったわ」といって満足そうに店を出た。
今、髪を切ってから2週間がたったが、会う人、会う人から髪型が変わったことをいわれ、髪を寄付したことを告げると例外なく「素晴らしいことをしたのね。偉いわ」と誉めてもらえる。娘はテレながらも、まんざらでない表情を見せている。
実は、私の妹は白血病で10歳の短い命を終えている。20年以上前の話だ。放射能治療で彼女の自慢だったきれいな黒髪も抜けてしまっていた。おしゃれだった妹にとって、それはとてもつらいことだった。「おねえちゃん、きれいでしょ」といって髪をとかしていた元気な頃の妹の姿を今でも思い出す。あの時、かつらをもらっていたら、どんなに喜んだだろう。「Locks of Love」のホームページには、かつらを提供された子どもたちのうれしそうな笑顔が載っている。娘の髪が、ひとりの子どもの笑顔を作り出してくれると思うと、とてもうれしく思う。
○……今週の土曜日、日本語補習校で運動会があった。補習校では、いろいろな日本的行事を工夫しながら行っているが、この運動会は子どもたちが一番楽しみにしている行事だ。万国旗がはためく中、「玉入れ」や「二人三脚」などアメリカの学校ではなかなか体験できない競技をした。今年から加わった競技の中に「馬跳び」があったが、知らない子どもたち多く、2人が交互に馬跳びをしていくという日本では誰もが知っていることがわからなかったらしい。見ていたら子どもたちは助走を大きくとってやっと跳べていた。跳び箱をやったことがないという子どもが多いので、仕方がないことなのだろう。
古川直子(ふるかわ?なおこ)さんのプロフィール
元スポーツニッポン新聞記者。長男が3歳半で渡米。長女を米国で出産.子育て歴は日本より米国のほうが長くなった。甘すぎて食べられなかったケーキと、薄すぎると思ったダンキン?ドーナッツのコーヒーが好物になった。野球はレッドソックス、アメフトはペイトリオッツのファン。すっかりニューイングランドの人間になってきたとイギリスでは、子どもたちが4歳から学校に通うことが普通だ。義務教育は5歳からなのだが、1年生の下に「レセプション?クラス」という4歳児を対象にした学年があって、小学校への入学手続きはこの学年に入る時に行われる。
4歳といえば、日本ではまだ幼稚園か保育園に通う年齢である。私は二男が「レセプション?クラス」に入った時、学校生活は遊びが中心なのではないかと思っていたが、そうではなくて、教室で読み書きや計算など本格的な学習が行われた。英語の本を毎日持ち帰って自宅でも読み方の練習をしなくてはならなかったので、息子がかわいそうに思えた。
幼児を学習させることについては、幼児教育関係者の間では批判があるとはいえ、すでに制度として定着しているのが実態.イギリス人の親たちは、わが子が早くから読み書きを覚えることを喜び、支持しているように見える。
私は最近、ウェールズ(注1)に仕事で行って、ウェールズが幼児をのびのびと遊ばせる体制に移行中であることを知った。ウェールズはこれまでイングランドと教育体制を共有していたので、4歳児からの「早期教育」も実施していた。しかし、「幼いうちから机に座らせて学習させることは逆効果」との結論に達し、方針転換したという。3歳から7歳までを「基礎段階期」として独立させ、戸外での活動を重視して幼児が遊びながら学び、社会性を身に付けていくような体制にする予定で、2008年度の実施を目指して現在、カリキュラムを作成中だ。フォーマルな学習の開始は子どもが7歳になるまで待つという。
ウェールズ地方政府のロドゥリ?モーガン首相は「私たちがイングランドと違う教育政策を実施するのは、画期的なことです」と胸を張っていたが、私は両手を上げて賛成したい気持ちだった。4歳の子どもを学習させることが望ましいとはとても思えないからだ。思いっきり外で遊び、自分の周りの世界を発見することこそが、幼児には必要なのではないだろうか。
ウェールズの決定がイングランドにも及び、幼児が学習の重圧から解放されることを、私はひそかに願っている。
(注1)イギリス連合王国はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドから成り、ウェールズはイングランドの中西部に位置する。スコットランドと北アイルランドは歴史的に独立性が高いが、ウェールズはイングランドの影響を最も強く受け、1999年に独立行政@構ができるまで、あらゆる行政制度をイングランドと共有してきた。
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