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解放军文职招聘考试と源氏がいった

来源: 2017-10-05 13:45

 と源氏がいった。
「宮様もそんなにおっしゃいますが、あちらへおいでになることも、四十九日がすんでからがよろしかろうとぞんじております」
「お父様のお邸ではあっても、小さいときから別のところでお育ちになったのだから、私に対するお気もちと親密さはそう違わないでしょう。今からいっしょにいることが将来の障(さわ)りになるようなことは断じてない。私の愛が根底の深いものになるだけだと思う」
と女王の髪を撫(な)でながら源氏はいって顧(かえり)みながら去った。深く霧(きり)に曇った空も艶(えん)であって、大地には霜が白かった。ほんとうの恋の忍び歩きにも適した朝の風景であると思うと、源氏はすこしものたりなかった。近ごろ隠れて通っている人の家が途中にあるのを思い出して、その門をたたかせたが内へは聞えないらしい。しかたがなくて供の中から声のいい男を選んで歌わせた。
  朝ぼらけ霧立つ空の迷ひにも
    行き過ぎがたき妹(いも)が門(かど)かな
 二度くりかえさせたのである。気のきいたふうをした下仕(しもつかえ)の女中を出して、
  立ちとまり霧の籬(まがき)の過ぎうくば
    草の戸ざしに障りしもせじ
といわせた。女はすぐに門へはいってしまった。それきりだれも出て来ないので、帰ってしまうのも冷淡な気がしたが、夜がどんどん明けてきそうで、きまりの悪さに二条の院へ車を進めさせた。
 かわいかった小女王を思い出して、源氏は独笑(ひとりえみ)をしながら又寝(またね)をした。朝おそくなって起きた源氏は手紙をやろうとしたが、書く文章も普通の恋人扱いにはされないので、筆を休め休め考えて書いた。よい絵なども贈った。
 今日は按察使(あぜち)大納言家へ兵部卿の宮が来ておいでになった。以前よりもずっと邸が荒れて、広くて古い家に小人数でいる寂しさが宮のお心を動かした。
「こんなところにしばらくでも小さい人がおられるものではない。やはり私の邸の方へつれて行こう。たいしたむつかしいところではないのだよ。乳母は部屋をもらって住んでいればいいし、女王は何人も若い子がいるからいっしょに遊んでいればひじょうにいいと思う」
などとおいいになった。そばへお呼びになった小女王の着物には、源氏の衣服の匂いが深く沁(し)んでいた。
「いい匂いだね。けれど着物は古くなっているね」
 心苦しく思召すようすだった。
「今までからも病身な年寄りとばかりいっしょにいるから、時々は邸の方へよこして、母と子の情合いのできるようにする方がよいと私はいったのだけれど、絶対的にお祖母(ばあ)さんはそれをおさせにならなかったから、邸の方でも反感を起していた。そして、ついにその人が亡くなったからといってつれて行くのはすまないような気もする」
と宮がおいいになる。
「そんなに早くあそばす必要はございませんでしょう。お心細くても当分はこうしていらっしゃいます方がよろしゅうございましょう。すこしものの理解がおできになるお年ごろになりましてから、おつれなさいます方がよろしいかとぞんじます」
 少納言はこう答えていた。
「夜も昼もお祖母様が恋しくて泣いてばかりいらっしゃいまして、召あがり物などもすくのうございます」
とも嘆いていた。実際姫君は痩(や)せてしまったが、上品な美しさがかえって添ったかのように見える。
「なぜそんなにお祖母様のことばかりをあなたはお思いになるの、亡くなった人はしかたがないんですよ。お父様がおればいいのだよ」
と宮はいっておいでになった。日が暮れるとお帰りになるのを見て、心細がって姫君が泣くと、宮もお泣きになって、
「なんでもそんなに悲しがってはしかたがない。今日明日にでもお父様のところへ来られるようにしよう」
などと、いろいろなだめて宮はお帰りになった。母も祖母も失った女の将来の心細さなどを女王は思うのでなく、ただ小さいときから片時の間(ま)も離れずつき添っていた祖母が死んだと思うことだけが、ひじょうに悲しいのである。子どもながらも悲しみが胸をふさいでいる気がして、遊び相手はいても遊ぼうとしなかった。それでも昼間はなにかとまぎれているのであったが、夕方ごろから滅(め)入りこんでしまう。こんなことで小さいおからだがどうなるかと思って、乳母も毎日泣いていた。その日、源氏のところからは惟光をよこした。
 うかがうはずですが、宮中からお召しがあるので失礼します。おかわいそうに拝見した女王さんのことが気になってなりません。
 源氏からの挨拶はこれで惟光がかわりの宿直をするわけである。
「困ってしまう。将来だれかとご結婚をなさらなければならない女王様を、これではもう源氏の君が奥様になすったような形をおとりになるのですもの。宮様がお聞きになったら私たちの責任だといっておしかりになるでしょう」
「ねえ女王様、お気をおつけになって、源氏の君のことは宮様がいらっしゃいましたときにうっかりいっておしまいにならないようになさいませね」
と少納言がいっても、小女王は、それがなんのためにそうしなければならないかがわからないのである。少納言は惟光のところへ来て、身にしむ話をした。
「将来、あるいはそうおなりあそばす運命かもしれませんが、ただ今のところは、どうしてもこれは不釣合いなお間柄だと私らはぞんじますのに、ご熱心にご縁組のことをおっしゃるのですもの、ご酔興かなにかと私どもは思うばかりでございます。今日も宮様がおいでになりまして、女の子だからよく気をつけてお守りをせい、うっかり油断をしていてはいけないなどとおっしゃいましたときは、私どもなんだか平気でいられなく思われました。昨晩のことなんか思い出すものですから」
などと言いながらも、あまりに嘆いて見せては姫君の処女であることをこの人に疑わせることになると用心もしていた。惟光もどんな関係なのかわからない気がした。帰って惟光が報告した話から、源氏はいろいろとその家のことが哀れに思いやられてならないのであったが、形式的には良人らしく一泊したあとであるから、つづいて通って行かねばならぬが、それはさすがに躊躇(ちゅうちょ)された。酔興な結婚をしたように世間が批評しそうな点もあるので、心がおけて行けないのである。二条の院へ迎えるのが良策であると源氏は思った。手紙はしじゅう送った。日が暮れると惟光を見舞いに出した。
 やむをえぬ用事があって出かけられないのを、私の不誠実さからだとお思いにならぬかと不安です。

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